中小企業・ベンチャーが”現場”で役立つ知財戦略 ~特許・商標で1000件の弁理士が語る中小企業・ベンチャーの知財戦略~ NPOBS 第3回実践研究会

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津田宏二

津田宏二

弁理士、工学博士、6次産業化プランナー。都内特許事務所勤務を経て独立。勤務時代には大手複数社を担当。勤務時代を含めて特許、商標で合計1000件以上の案件に携わる。従事分野は、自動車(含むハイブリッド自動車、電気自動車)、ロボット、軸受、鉄鋼、通信、家電(含むオーディオ家電等)、建設、画像処理技術、音声認識技術、事務機器、ゲーム、遊技機など多岐にわたり、機械分野、制御分野、ソフトウエア分野、ビジネスモデル分野を得意とする。アイネクスト特許事務所所長。

来る10月16日NPOBSの正会員でもあり、起業3年で200社以上の顧客を獲得した津田宏二先生を講師に迎え、「個人事業主、中小企業、ベンチャーが役立つ知財戦略」についてお話いただきました。このページでは、津田先生が語った「個人事業主、中小企業、ベンチャーが役立つ知財戦略」のエッセンスをお届けいたします。

[知的財産を俯瞰する(知的財産の概要)]

今、知的財産権は世の中に溢れている。この知的財産権の知識がないと商品が真似されたり、急に販売差し止めが送くられてきたりする。これらを防止するためには、適切な知財戦略が必要。戦略を立てる際も闇雲に知財の取得を行なうのではなく、知財のメリット等を意識して、戦略を立てることが必要。

知的財産権を取得するメリット

知的財産権を取得するメリットは大きく下記の2点。

  1. 他人が真似するのを防止できる。

  2. 自分が自由に使えるようになる

知的財産権は儲かるのか?

中小企業が知的財産権を使って儲けるには、中小企業に強い弁理士・特許事務所を選択し、戦略を立てることが重要。相談いただく方でよくいらっしゃるのは、「(アイデアを思いついた!→登録しよう→作ろう→売り込もう)」の順番で考える方。この流れではなく、逆にどうやって売り込むか?(マーケットイン的思考)で考える。

知財を含んだビジネスモデルの考え方

知的財産権を取得を盛り込んだビジネスモデルは下記ように検討する。

  1. ビジネスモデル・プランを考える

    • →ビジネスモデル・プランの検討は「a.ニーズの有無の調査→b.マーケット・競合の有無→c.どこでマネタイズするか?の検討→d.参入障壁の形成が可能か?検討」の順番で考える。

    • →参入障壁をどうするか?どのような知的財産を取得するか。

  2. 事業計画を立てる

    • →知的財産をどのタイミングで取得するか?等を検討する

  3. 事業実施を行なう(事業経過のPDCA)

    • →ここで知的財産権を取得(知的財産権の取得は「ビジネス構築の後」に行なうのではなく、「ビジネス構築と共に」行なう)

ビジネスの必須項目「参入障壁」

参入障壁を構築できなければ、いずれマーケットシェアは奪われる。そのためにビジネスモデル構築タイミングで参入障壁の構築を行なうことが必要。知的財産権は参入障壁を比較的短時間で構築可能だが、他で参入障壁を確立する事が出来れば知的財産権の取得は不要な場合も。

「E.M.ポーターの参入障壁」(参考)

  1. 規模の経済

  2. 製品差別化

  3. 参入投資(巨額投資)

  4. 仕入先変更コスト

  5. 流通チャネル確保

  6. 規模に関係ないコスト

  7. 政府の政策

  8. 報復予想

[知的財産権の基礎知識]

知的財産権の種類

主な知的財産権の種類は大きく下記の3点。

  • 特許権、実用新案権:対象はモノ・構造・サービス・ビジネスモデル・ソフトウェア等

  • 商標権:対象は会社名、商品名、サービスなど

  • 意匠権:デザイン、パッケージ、包装紙など

知的財産権の存続期間

  • 特許:出願から20年

  • 実用新案権:出願から10年

  • 意匠権:登録から20年

  • 商標権:登録から10年(更新可能のため、更新を行えば半永久的に取得可能)

[知的財産権の紛争局面で起きること]

どのように警告が来るのか?

→知的財産権を侵害している場合、基本的にメール等でいきなり警告が来る。(販売停止要求など)特にマーケットトップシェア企業は知的財産権に対して敏感。商品が売れ始めると突然警告が来る。

知的財産の捉え方

知的財産には下記の2つの捉え方が存在する。

「消極的利用:保険」

→将来のリスクを減らす保険のようなもの(上記の警告等防止)

「積極的利用:参入障壁」

→利益の増加。マーケットシェアの確保、及び成長を狙ったもの。

知財戦略

知財戦略で検討すべきことは下記の三点。

  1. 知的財産権の制度活用

  2. 知的財産権の効果の活用

  3. 会社経営と知的財産権をリンクさせた活用

[知的財産権の制度]

特許権の特長・申請までの流れ等

「特長」

  • 審査が必要。申請すれば必ず登録されるわけではない

  • 早い者勝ち

  • 権利内容は公開される

「申請の流れ」

特許:事前調査→出願→審査請求→拒絶対応→登録
※特許は出願後に審査請求を行なう必要あり。

「注意点」

  • 自分で公開したものでも公になったものは特許が取得できない

  • 出願した後にアイデアを付け加えることはできない。

  • 出願公開制度が存在し、出願から1年6ヶ月で自動的に公開される。
    (開発中の技術が自動的に公開されてしまう。)

商標登録の注意点

  • 商品または役務の単位で商標されるため、商標登録すれば、どの商品・役務でも自由に使えるようになるわけではない。

  • 商標権で守られる範囲は登録商標になり、守られる範囲は登録商標そのもの。(登録商標の一部を抜き出した部分には含まれない。)

  • 先出願主義のため、先に申請した商標が商標登録される。昔から使っているからといって、商標登録が優先されるわけではない。また、新規性が要求されない。

[知的財産権の効果]

特許の効果

「権利による効果」

  1. 自分のアイデアが使われることを防止する

  2. 他人に真似されるのを防げる

「派生効果」

  1. 資金調達ツールとして活用可能

  2. 良い人材を集めるツールとして活用可能(会社への信頼性アップ)

  3. 社員のモチベーションアップに繋がる

  4. 営業ツール・ブランディングツールとして活用可能

  5. アライアンスを有利にするために活用可能(JV)

  6. 他社へライセンス・譲渡するため

商標登録の効果

「権利に寄る効果」

  1. 自分の会社名、商品名、サービス名が使われなくなるのを防げる

  2. 自分の会社名、商品名、サービス名が他人に真似されるのを防げる

「派生効果」

  1. ブランディング

  2. 社内効果(社内団結の強化可能)

  3. 棚からぼたもち(アイホン案件)

[会社経営と知的財産権とのリンクのさせ方]

研究→開発→製品→商品化の各段階で保護する対象も変わってくる。(書類の書き方も変わってくる)ため、各段階に応じた対応が必要となる。(研究部分のシーズ段階で特許を取ることが非常に重要。)

特許の種類

  1. コンセプト特許:「研究」のタイミングでコンセプトレベルのアイデアで特許取得

  2. 実施特許:「商品化」の部分で特許を取得

理想の知財活動のサイクル

経営課題から見た知財活動の課題を解消できる(知財活動の成果が経営の成果に結びつく)知財活動を行なう。

知財戦略は下記の3点から立体的に考える

  1. 知的財産権の効果

  2. 知的財産権の内容

  3. 知的財産権の取得タイミング、知的財産権の制度

知財戦略の失敗例

  • 後発の他人に商標登録されてしまい、使えなくなった

  • 事業化前に発明の内容が出願公開されてしまい、事業化前にシェアが奪われてしまった。

  • 実施特許の他にコンセプトの特許をとっていなかったため、事業の横展開が難しくなった。

[知的財産権の取得にかかる費用]

各知的財産権申請の費用感

  • 特許:50万円~

  • 実用新案:40万円~

  • 意匠:20万円~

  • 商標:20万円~

知的財産権取得に関する助成金の存在

  • 地方自治体によるが、中小企業・ベンチャーに対して取得費用の2/3を助成されるものも存在する。(ご相談ください)

[まとめ]

  1. ビジネスをやっている限り身の回りは知的財産だらけ。といってもビジネスが当然主役

  2. 知的財産、知的財産権と関係ないのではなく、知らないだけ。これを知らないと「ある日突然」。

  3. 多くの場合、リスク型かこうなった状態で解決不可能な問題として現れてくる。マーケット上位の会社は常に戦っている。

  4. 会社は人・モノ・金で動いている。知的財産権をものだけに使おうとすることはもったいない

  5. 儲けるには、戦略が必要。

[講師紹介]


・津田宏二
弁理士、工学博士、6次産業化プランナー。都内特許事務所勤務を経て独立。勤務時代には大手複数社を担当。勤務時代を含めて特許、商標で合計1000件以上の案件に携わる。

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