杉野 洋一
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東京理科大学 特殊講義1: 本当にベンチャー起業できる(かも)!現役コンサルタントが講師を務める起業の実際、起業の実践力を養成する講座
本稿は2020年7月~9月にかけて、東京理科大学で正課の講座として実施された口座についてご報告するものです。本講座は、株式会社PASONAとの連携で実施されました。
企画主旨
- 本講座は伝統ある大学の経営学部3-4年生が対象である。従って、新しい知識・理論の習得よりも寧ろ知識・理論の定着を主眼とする。即ち、今まで習った知識・理論を卒業後の実務で活用できる能力、即ち、 ”起業における実践力“ を養成することを目的とする。
- 題材として、よくある飲食、小売業などの小規模な起業形態は避け、ベンチャー起業を取り上げる。受講生が社会に出てからのことを想定し、視野(scope)を広く取らせるためである。例えば、企業内で社内ベンチャの立ち上げを行う場合などでも使える知識となるよう配慮した。
- 講師は経営コンサルタントとして活躍する者で、起業の実務を知り、受講生の興味、関心を誘い、講義内容を適切に伝えられる中小企業診断士が担当する。
設計
ベンチャ起業を題材にとり、法人設立から資金調達ピッチまでを模擬体験
- 1時限90分で2時限連続で7日間行うというのが、大学から与えられた与件。
- 90分×2時限=3時間を、3つのコマに分け、1つのテーマで1時間講義、もう一つのテーマで1時間講義、最後の1時間を班活動に充てる。
- 1時間の班活動では毎回、事業計画書の一部分を作成する。計画書の内容となる事業については、各班が独自に設定する。作成した計画書の一部分をを班活動の成果物とし、全部合わせると一つの事業計画書が完成する構成とする。基本的には事業計画書の1ページ目から順に作っていくことになるが、経営理念だけは後回しとした。
- 各回で創業者を主人公とした物語風の事例文を用意、受講生は主人公に共感し、追体験する。特に社会経験が少ない学生に対し、講義テーマの必要性や利用場面を明らかにすることとした。
- 最終コマは資金調達ピッチを模して、ビジネスコンテストとする。各班は作成した事業計画の発表を行う。
- 7コマ目、8コマ目は先輩起業家の講演とし、通常講義は行わない。
コマ | 講義テーマ | 成果物 | 事例文 |
---|---|---|---|
1コマ目 | イントロダクション | 事業計画書 表紙 | 大学生の主人公が友達に誘われ会社を設立する。 |
2コマ目 | 法人設立 | 事業計画書 企業情報 | |
3コマ目 | プロダクト開発 マーケティング | 事業計画書 プロダクト紹介 | 主人公と会社を設立した仲間が事業内容を検討する。 |
4コマ目 | プロダクト開発 競合調査 | 事業計画書 競合比較表 | |
5コマ目 | ビジネスモデル | 事業計画書 Lean Canvas 事業計画書 料金体系 | 主人公と仲間が、事業のビジネスモデルを確定し、売上方程式を検討する。 |
6コマ目 | 売上方程式 | 事業計画書 売上方程式 | |
7コマ目 | 先輩起業家の講演 | ||
8コマ目 | |||
9コマ目 | 財務計画 損益計算 | 事業計画書 損益計画 | 主人公と仲間が、決めたビジネスモデル、売上方程式から費用の見積もりを行う。 |
10コマ目 | 財務計画 資金繰り | 事業計画書 資金繰り計画 | |
11コマ目 | 資本政策 | 事業計画書 資金調達計画 | 主人公と仲間が、VCやエンジェル投資家に話を聞く。また、不足している人材の獲得について考える。 |
12コマ目 | 採用と理念 | 事業計画書 採用計画 事業計画書 経営理念 | |
13コマ目 | 行動計画 | 事業計画書 行動計画 | 主人公と仲間が、VCや投資家の集まる資金調達ピッチで発表を行う。 |
14コマ目 | ビジネスコンテスト(成果物発表) |
成果物例
上記は例にすぎないが、実際に受講生が作成した成果物も半数の班が上記の計画書と同等またはそれを超過する水準を達成できた。
理解&習得
各講義における理解と習得内容を以下に整理した。
講義1テーマ | 講義2 テーマ | 習得技能・理解 | |
---|---|---|---|
初日 | イントロダクション | 法人設立 |
|
2日目 | プロダクト開発 マーケティング | プロダクト開発 競合調査 |
|
3日目 | ビジネスモデル(収益構造) | 売上(限界利益)方程式 |
|
4日目 | 先輩起業家の講演 | ||
5日目 | 財務計画 1 損益計算 | 財務計画 2 資金繰り |
|
6日目 | 資本政策 | 採用計画 |
|
7日目 | 行動計画 | ビジネスコンテスト |
|
講座運営
- 感染症予防のため、講義は全てオンラインで行われた。
- 運営側で5人ずつの班を作ったが、登録しているものの全く出席しない学生もあり、結果として3人~5人の班ができ、班の数は6となった。
- 班活動では、講師とNPOビジネスサポートの専門家が支援を行った。支援員は2つの班で1名とした。但し、最終日については各班に1名の支援員を付け、発表方法についての助言を行った。
- その他、講義前、講義後の活動を以下に整理した。
受講生 | 講師・運営 | |
---|---|---|
講義前 |
|
|
講義中 |
|
|
講義後 |
|
|
結果
成果物品質
前述の成果物例に近い又は超える品質のものを半数に当たる3つの班が発表することができた。企画、設計段階では、満足できる品質の発表を行えるのは1つの班と予想していたが、結果として大幅に高い品質の成果を残すことができた。
受講生への質問票調査
質問票調査の結果の一部を下記に示す。
質問票調査結果から本講義の満足度は極めて高いものであった。本講座では登録者数は35人であったものの、実際に出席した学生は20名程度であった。その20名の内、18名の回答である。脱落率が低いことも本講義の満足度が高いものであったことを裏付ける事実である。
講義内容は、若干難易度が高いと思っていたが、難易度が適切であったとする回答が難しかったとする回答を大幅に上回った。他の質問では学生に既習内容を聞いているが、法人設立、ビジネスモデル、財務計画で既習と答えた学生が多い。今回は経営学部の学生が対象であったが、他学部で行う際には難易度の調整が必須である。
班活動の分量も適切であったとする回答が大幅に多かった。前述の難易度も併せて考えると、班活動と難易度が適切であったと推測される。
実施体制
本講座は株式会社PASONAとの共同で実施された。主にPASONAが運営を担当し、NPOビジネスサポートが講義を担当した。
NPOビジネスサポート側
法人設立 担当 | プロダクト開発 マーケティング&競合調査 担当 | ビジネスモデル 担当 |
財務計画 損益計算 担当 | 財務計画 資金繰り 担当 | 資本政策 担当 |
採用&経営理念 担当 | 講座設計&PM 売上方程式・行動計画 担当 | 企画運用 助言、班活動支援 担当 |
事例文及び班活動支援 担当 | 理事長 |
参考
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